水平線画像

ホーム > 活動の経緯と記録 > 久地緑地の保全管理計画

雑木林を育み、里山を楽しもう 「久地緑地の保全管理計画」

平成14年2月  久地緑地の森づくりワークショップ・川崎市環境局緑政部緑政課
から 転載(一部改編)

久地緑地の自然(生態系調査結果)


1. 地形・土壌調査の結果

1) 久地緑地の地形

低地緑地は、北向きの斜面で傾斜5〜10度の斜面と、傾斜30度の急傾斜地からなっています。斜面下には二ケ領用水が流れており、水辺と接しています。

また、久地緑地の斜面には、湧水が出る場所が2ケ所あり、その湧水が斜面中央の小さな谷を経て、二ケ領用水へと流れ込んでいます。

また、斜面北東部には、切り立った崖(コンクリートで保護)があります。


2) 久地緑地の土壌

久地緑地の土壌は、褐色森林土が主体です。

褐色森林土とは、コナラやクヌギなどの落葉広葉樹林の下にできる土壌です。落葉が堆積した下にフカフカした柔らかい土(腐葉土)がたまっています。

褐色森林土の下には、粘土や関東ローム、砂礫などの地層があり、谷や崖などで露出が見られます。


2.植物調査の結果

1) 久地緑地の森の植生

植物調査の結果、久地緑地は、落葉広葉樹の高木とメダケ林を主体とする二次林であることがわかりました。二次林とは、一度伐採された後に再生された林です。

クヌギやコナラをはじめ現在生育している樹種の構成から、かつては採炭、木材、堆肥づくりなどに利用されてきた里山の雑木林であったと考えられます。

クヌギやコナラは、幹回り樹高ともに大きなものが多く、大木になるニレ科のケヤキ、エノキ、ムクノキなどが大きく成長した木が数多くあります。また、ヤマザクラやウワミズザクラなどの花木の大木も点在しています。

久地緑地は、このような落葉広葉樹の高木を主体とする森ですが、下草や低木の生育状況の特性として、「アズマネザサが多いタイプ」、「メダケが多いタイプ」、「低木が多いタイプ」に大別されますが、細かく分類すると14種類の植生タイプに区分されました。


久地緑地の植生区分   <植生区分図>

植生タイプ 主な樹林
1 メダケが多い高木林 コナラ・エノキ
2 アズマネザサが多い高木林(尾根部) コナラ・ムクノキ
3 アズマネザサが多い高木林(斜面) クヌギ・コナラ・ムクノキ
4 低木が密生する高木林 クヌギ・ケヤキ・ムクノキ
5 谷部の樹林 ケヤキ・ミズキ・シラカシ
6 アズマネザサが多い亜高木林 エゴノキ・ミズキ
7 スギ植林地 スギ
8 崖地の樹林 常緑の低木
9 メダケ林 メダケ
10 小規模な抜開地(ギャップ) シロダモ・ヤツデ・アオキ
11 谷底部 シュロ・アオキ・シダ
12 つる植物が繁茂しているところ クズ・カナムグラ
13 人工草地 イネ科の植物
14 刈り取り地  

2) 久地緑地を構成する植物種

久地緑地を構成する植物種の概要を調べたところ51科104種の植物が確認されました。久地緑地の植生タイプの大半が「アズマネザサが多いタイプ」であるため、低木や草木層が単調化している傾向があります。しかし、以下に示すような、里山を特徴づける植物種も確認されました。

スミレ類、ムラサキシキブ、ウグイスカグラは、植生区分6のエゴノキやミズキなどの亜高木の林床で、ミヤマナルコユリ、ヤブラン、ホトトギス、キツネノカミソリは、植生区分10のギャップ、植生区分の境目など木漏れ日が差し込むような場所に生育していました。


里山を特徴づける植物種

科名 種名 生育環境の概要等
スミレ スミレ類
例:タチツボスミレ
草花 神奈川県内で最もよくみられるスミレ。明るいところを好み、管理された雑木林や草地、土手に生育する。地下茎で越冬し、早春に新葉を出す。花はおもに3〜5月に咲き、種子はアリによって散布される。
クマツヅラ ムラサキシキブ 花木 神奈川県内に広く分布する落葉低木。尾根から谷までごく普通に生育する。6〜8月に淡紅紫色の花をつけ、果実も淡紅紫色で球状。
スイカズラ ウグイスカズラ 花木 神奈川県内の丘陵地から山地に広く分布する落葉広葉低木。4〜5月に葉の展開と同時に、桃色の花をつける。6〜7月に赤い液果をつけ、鳥によって種子が散布される。
ユリ ミヤマナルコユリ 草花 神奈川県内では多摩丘陵と丹沢山地に分布し、雑木林など明るくやや乾燥した林内に生育する多年草。5〜6月に開花し、秋に黒紫青色の液果をつける。地下茎を持ち、地中で越冬する。
ヤブラン 草花 神奈川県内の平地から丘陵地に分布し、照葉樹林や植林地の林床に生育する常緑の多年草。8〜9月に細長い紫色の花序をつけ、11月頃に黒紫色の実が熟す。
ホトトギス類
例:ホトトギス
草花 神奈川県内全域に分布し、丘陵から山地の半日陰になる林内や崖地に生育する多年草。花は7〜9月、熟すと微細な種子を多数散布する。地下茎をもち地中で越冬する。
ヒガンバナ キツネノカミソリ 草花 林縁や土手にはえる多年草。神奈川県内では平地から低山地に広く分布する。葉は早春に展開し、夏期に枯れる。8月に開花する。鱗茎を持ち、地中で越冬する。

3.動物調査の結果

アンケート調査:第1回ワークショップの際の参加者アンケート 平成13年9月5日実施
既存文献調査:川崎市の動物(川崎市自然環境調査報告T:p.69-82 1987)

 1) ホ乳類

今回の現地調査では、ホ乳類は確認されませんでした。しかし、アンケート調査によるとタヌキ(ホンドタヌキ)、モグラ(アズマモグラ)、コウモリを目撃したという回答がありました。

また、既存文献調査によると高津区内では、アズマモダラ、アブラコウモリ、クマネズミ、ドブネズミの生息が報告されています。

 2) 鳥類

久地緑地および周辺について現地調査した結果、3目11科11種の鳥類が確認されました。

久地緑地内では、ハシブトガラス、キジバト、シジュウカラ、ツバメ、スズメ、ヒヨドリなど樹林や人里の鳥が確認されました。周辺地域では、久地不動尊ではウグイス、コゲラ、平瀬川ではゴイサギ、ハクセキレイ、ニケ領用水ではカワウが確認されました。

また、アンケート調査によるとコジュケイ、ツグミ、カワセミを目撃したという回答がありました。

 3) 両生類・ハ虫類

今回の現地調査では、2目4科4種の両生類・ハ虫類が確認されました。

両生類ではアズマヒキガエルが、ハ虫類ではニホンカナヘビ、ニホントカゲ、シマヘビが確認されました。これらは主に草地と林縁部で確認されました。

一方、アンケート調査によると、ヒキガエル(アズマヒキガエル)、アマガエル、トノサマガエル(トウキョウダルマガエル)、シマヘビを目撃したという回答がありました。

また、既存文献調査によると高津区内では、ニホントカゲ、ヤモリ、ニホンカナヘビ、タカチホヘビ、アオダイショウの生息が報告されています。

 4) 昆虫類

今回の調査では、8目33科46種の昆虫類が確認されました。

草地、林縁、地表に分け観察・採集を行ったところ、草地ではツチイナゴやクビキリギリス、オンブバッタといった草地性のバッタ類、林縁ではカネタタキやアオバハゴロモなど樹上性の昆虫類、地表ではセアカヒラタゴミムシなどの地表性のゴミムシ類などの昆虫類が確認できました。また、アオスジアゲハやコミスジなどのチョウ類やアキアカネ、シオカラトンボなどのトンボ類が確認されました。

また、アンケート調査によると、チョウ類では、ゴマダラチョウ、甲虫では、カブトムシ、クワガタ、カミキリムシを目撃したという回答がありました。

 5) その他

その他の生物として、主に林内でクモ類のジョロウグモ、谷の沢筋で甲殻類のサワガニが確認されました。


ページのトップへ


inserted by FC2 system